交差点内での進路変更は違法なの?
もし交差点での進路変更が事故につながった場合、過失責任はどうなるの?
安全に進路変更するにはどうすればいい?
神戸市で教習指導員を10年ほどやっています。
追い越しや車線変更、路上駐車などを避ける動作、合流など、車を左右に寄せる動きのことを「進路変更」といいます。
進路変更は運転動作の中でも危険を伴うリスクが高いです。そして、多くの人がルールを誤解している部分があります。
今回は普段から質問されることの多い、交差点付近における進路変更に的を絞ってお話していきます。
交差点での進路変更の法的側面:
交差点内での進路変更(車線変更)について、法的な規制や違反の条件を詳しく解説します。
道路交通法上、交差点付近での進路変更(進路変更)は、原則として直接的には違反にはなりません。
逆に、右左折する前には、あらかじめできるだけ曲がりたい方向に対して進路変更することが義務付けられています。
しかし、特定の条件下での進路変更は違反行為となるため、注意が必要です。
追越し・追抜きの禁止
交差点内やその手前30mでの追越しや追抜きは禁止されており、これに伴う車線変更も禁止されます。これは、後続車が前の車を追い越すために進路を変更することを禁じる道路交通法第30条3号、同38条3項に基づいています。
黄色実線による車線変更の禁止
交差点手前に黄色実線による車線境界線がある場合、この実線を越えた車線変更は禁止されています。追越しや追抜きでなくても、黄色実線を越える形での車線変更は違反となります。交差点付近だけ中央線が黄色で書かれていることは少なくありません。
交差点を右折したいのに右折レーンに入り損ねた時などに、衝動的に車線変更をすることは危険です。道路表示をよく見て、いわゆる「イエローカット」をしないように気を付けましょう。
後続車の進路妨害と車線変更
道路交通法第26条の2では、進路変更により後続車の速度や方向を急に変更させるおそれがある場合、進路変更をしてはならないと規定されています。そのため、車線変更により後続車の走行を妨害する可能性がある場合、過失を問われることがあります。技能検定では「後車妨害」にあたり、一発中止(不合格)の危険行為です。
道路交通の安全円滑を確保した上で進路変更を行わなければなりません。
以上の点を踏まえ、交差点での車線変更は法的に許容されている場合が多いものの、安全性や他のドライバーへの配慮を考えると、必要がない限り避けるべき行動と言えます。安全運転を心掛け、法規制だけでなく、周囲の状況にも注意を払いましょう。
安全性と注意点:
交差点での車線変更の際に注意すべきポイントを列挙します。
交差点手前でのウィンカーの使用
右左折の合図の混同して伝わらないように注意しましょう。進路変更の合図を右左折の合図と間違えて認識されると、危険につながる場合があります。
例えば交差点付近に路上駐車がある場合に、それをよける動作は「進路変更」にあたるので、合図が必要です。しかしそのための合図を交差道路の車が「右左折のための合図」と勘違いした場合、危険につながります。
周囲の車両の確認
交差点付近での車線変更では、直線での車線変更時よりも複雑な交通状況を想定しなければなりません。ミラーや目視をして後方や側方の安全を確認することに加えて、交差道路からの車両の飛び出しも警戒しなければなりません。見通しの悪い交差点付近では、できるだけ車線変更は避け、車や歩行者の飛び出しに備えましょう。
スピードの調整
交差点付近で車線変更をすうる時は、安全な速度を心がけましょう。前述したように、交差道路からの車や歩行者の飛び出しが想定されます。見通しの良い交差点でも、交差道路に車が来ている場合は優先関係などに十分注意し、出会いがしら事故への注意が必要です。
見通しが悪い交差点の場合は、優先道路でない場所では徐行義務があります。優先道路での車線変更には徐行義務はありませんが、死角から車や歩行者の飛び出しがあることは十分に予測したうえで安全な速度を作りましょう。
黄色実線の確認
黄色実線が引かれている場合は、車線変更が禁止されています。黄色実線を越えないようにしましょう。
事故と過失責任:
交差点での車線変更が事故につながった場合、過失責任を問われる可能性があることを説明します。適切な判断と安全運転の重要性を強調しましょう。
過失責任とは
交通事故における過失責任とは、事故発生に関してどちらの当事者にどの程度の責任があるかを示す割合です。この割合によって、損害賠償額が決定されます。
車線変更事故の過失割合
基本的に、車線変更事故では、車線変更を行った車(進路変更車)と後続の直進車との間で、過失割合は「進路変更車70:後続直進車30」とされています。これは、車線変更車が進路変更の際に十分な注意を払わなかった場合に適用される割合です。
事故の状況による過失割合の変動
過失割合は、事故の具体的な状況によって変動することがあります。例えば、車線変更車がウインカーを出さずに進路変更した場合、その過失割合は前方車が90%、後続車が10%になったという判例があります。また、後続車がスピード違反をしていた場合や、車線変更が法律上禁止されている箇所で行われた場合など、さまざまな要素が過失割合に影響を与えます。
裁判例による過失割合
過去の裁判例では、並走状態からの車線変更による事故で、被害者側の過失が否定されることがあります。特に、車線変更開始から衝突までの時間が短かったり、加害車両が被害者車両の後ろから来たりした場合、被害者側に有利な事情として認定されることがあります。
まとめ:
交差点での車線変更は、法的な規制や安全性の観点から多くの注意を要します。基本的な車線変更に対する注意に加えて、交差点では交差道路の状況を把握しなければなりません。安全確認においては、目がいくつあっても足りません。交差点付近での進路変更はルール上禁止行為ではありませんが、できるだけ車線変更をしないようにしましょう。
そして、もしやむを得ず車線変更を行う場合は、今回の記事を参考にして安全に車線変更を行うように心がけてください。
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